1年半振りの「ピアノあれこれ」のアップデートになりました。今日は、お弟子さんのグランドピアノの調律に行ってきましたので、ピアノの音作りについてお話します。
 
まず、「ピアノの音」が電化製品のように、それぞれのメーカー、ブランド、型式によって予め仕様が固定されていて、同じ型式だったらすべて同じ音量、音色になっていると、多くの方が考えていらっしゃるのではないでしょうか。全く違います。ピアノは電化製品ではありませんので、たとえ同じブランドの同じ型式、同じロットで生産された楽器でも、1台1台全く異なります。もし、ショールームに同じ型式のピアノが何台か置いてあったら、弾き比べてみてください。1台1台全く違う音が出るはずです。
 
では、何故新品のピアノなのに、1台1台音が違ってしまうのでしょうか?
答えは、簡単です。ピアノが「木」で出来ているからです。
「木」は生きていて、たとえ同じ寸法で裁断して同じ処理を施したとしても、全く同じ年輪、部位のものを揃えることは不可能です。ですから、見た目が同じでも、同じ機種でも、音は全く変わってしまいます。
 
さて、新品でさえこれだけの差異が生じるのですから、買ってから年月が経過するごとに、状態はもっと変化します。温度・湿度管理からはじまり、「整調」「整音」「調律」のやり方次第で、千差万別のものとなります。
 
話は変わりますが、スタジオのコンサートグランドは、今年の1月にハンマーを全交換しました。
いつも広島からお呼びする技術者の馬場さんに、浜松の業者さんに頼んで特注で作成してもらったハンマーに交換していただきました。やっと半年以上経過してハンマーにも平面が出来て程よい打弦状態になりましたが、この半年間、全くハンマーに手付かずであった訳ではありません。
最初に馬場さんにある程度ハンマーに針を入れておいていただき、その後は、定期的にアントワーヌ自身でこの「整音」(針を入れること)処理を行ってきました。
 
特にレッスンで使用するスタジオのピアノは、1日に何人ものお弟子さんが弾きますし、自分も練習しますので、ピアノの使用状況は過酷です。すぐにハンマーに弦の跡が付いて硬くなってしまい、その硬くなったハンマーが弦を打つので、音も硬くなってしまいます。「整調」(ピアノのアクションの調整)は、馬場さんに来ていただいたときにお願いしますが、以降、「整音」「調律」は最低毎月、多いときでは月に2回、アントワーヌ自身で行います。
すなわち、自分で「整音」「調律」を行うことで、自分の好みの音に仕上げているのです。スタジオのコンサート・グランドは、アントワーヌ自身が作り上げた「私の音」です。
びっくりすることに、うちの大人のお弟子さん達は、この「整音」「調律」の変化に敏感で、この2つを行うと皆さんすぐに気が付かれます。皆さん、「音」に対して、とても「良い耳」をお持ちです。
 
「ピアノ関連サービス」のところに書きましたが、芸術的なピアノの音を出すには、「楽器」「演奏」「音響」の3つのエレメントが必要不可欠です。私は、この3つのエレメントをすべて自分自身で行うことにより、芸術的な音を論理的、効果的に作り出すことを可能にし、それを当教室の最大のメリットとしています。
 
次回は、「弦は切れるもの」というテーマで書きたいと思います!