「その5」ではデジタルかアコースティックか?の話をしましたが、今回はアコースティックの場合、新品と中古、どちらを選ぶべきなのか?についてお話します。
アップライトとグランドで、答えが違います。アップライトは新品、グランドは中古を購入すべきです。理由を以下にご説明致します。まず、メインテナンス(整調、整音、調律)にかかる費用はアップライトもグランドもほとんど変わりません。また経年劣化による修理、あるいはオーバーホールの費用もほとんど同じです。しかしながら、アップライトとグランドでは楽器自体の元の値段が少なくとも3倍以上違いますので、例えば50万のアップライトに50万の費用をかけてオーバーホールしても仕方がありません。それなら、50万で新品を買った方がいい訳です。
ただ、楽器そのものを考えると、ピアノという楽器はそもそもある程度の年数が経過しないと枯れたいい音が出ません。また、ピアノに使用するスプルース等の「木」は成木に育つまで30年以上かかるため、現在ではほとんど採り尽くしてしまい、よい「木」が残っていません。これらの絶対条件を考えてみると、スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハ等どのブランドをとっても、1960年~70年にかけて製造されたピアノが一番いい音が出ます。もちろん、楽器も「当たり、外ずれ」があるので、当たった楽器で、かつきちんと調整されてきたもの、ということになります。特にスタインウェイ、ベーゼンドルファーの中で名器と呼ばれるものは、中古でも値段が新品とほとんど変わりません。本当にきちんとメインテナンスを続けて行けば、ピアノは50年100年変わらずすばらしい音を奏でます。
では、日本のブランドの場合どうなのか?というと、ヤマハもカワイも年代によって楽器そのものの設計を変えています。楽器の設計によるので仕方がないのですが、グランドの場合、ヤマハは今のCシリーズより昔のGシリーズの方が圧倒的にいい音が出ます。でも、カワイの場合は現在の楽器の方がいい音がします。このように一言で「ピアノ」と言っても、タイプ、大きさ、製造年、ブランドによって全く異なるものだということがよくわかります。
ちなみに、世界中どこに行っても日本のブランドはやはり安心できます。ヨーロッパのブランドでも中国で製造されているもの、もともと中国のブランドは、やはり避けた方がいいと思います。必ず壊れます。