第2回は、ドビュッシーの「月の光」です。この曲は、「ベルガマスク組曲」(全4曲)の3番目に収められています。ドビュッシーの音楽は標題音楽ですので、ドビュッシー自身が付けたタイトルどおりに曲がイメージできます。この「ベルガマスク組曲」は初期の作品(1890年作曲)ですが彼の宇宙観がよく表現されていて、ドビュッシー独特の和音構成に親しむのに最適です。ちなみに、「ベルガマスク」をイタリアの「ベルガモ風の」と訳すのは誤りで、ベルレーヌの詩集の中の”masques et bergamasques” から取ったものなので、この言葉自身に大意はありません。

  1. まずドビュッシーを弾く大前提として、指~腕~肩の脱力ができていなければなりません。そして、全体的に指は伸ばした状態で弾きます。
  2. ドビュッシーの和音はとても緻密に計算されています。左右両手の和音が乱れることなくピッタリ合うと、きれいな倍音が鳴るようにできています。特にスタジオのコンサート・グランドで弾くと、この倍音がパイプオルガンの音になってよくわかります。
  3. もう一つ、ドビュッシーの重要なポイントはウナコルダ・ペダルの存在です。これをうまく踏めるか踏めないかで、何十通り、何百通りと可能な「音のパレット」を作れるかどうかが決まります。かつてミケランジェリは、ウナコルダを5段階に踏み分けていたそうですが、私自身はハーフを含めて4段階に踏み分けています。それにより、目まぐるしく転調を繰り返す「音のグラデーション」に対応して音色を変化させることができます。
  4. さらにドビュッシーの特徴でもある「拍子の混在」がこの曲にも見られ、2拍子と3拍子が交互に出てきたりするので、この部分をまずはメトロノームで完璧にかっちり取ることが曲の完成度を左右します。

 

多くのピアニストがこの曲を録音していますが、拍子を楽譜どおりにきちんと取って弾いている人が意外と少ないのが残念です。ドビュッシーの場合、この「拍子の変化、混在」が彼の音楽の一部であるため、これをきちんと取るだけで不思議と完成度が上がります。どうぞ、試してみてください。