今回は、ショパンの「幻想即興曲」を取り上げます。実際にはショパンがこの「幻想」という名前を付けたのではないようですが、「幻想」と名の付く作品はなかなか掴みどころがなく、どのように弾いてよいのかわかりにくいと思います。「幻想」という以上、音は絶対に現実的になってはいけないのですが、一つだけ重要なポイントを上げるならば、「架空の世界」を上手に表現することです。この「架空の世界」は「天国」と置き換えてもいいですし、「霞(フィルター)がかかった世界」と置き換えてもいいです。また、幻想曲は強弱、緩急、明暗などのコントラストをより強調すると、それらしくなってきます。

  1. まず第1主題は左手が6等分、右手が8等分です。これはゆっくり合わせると、絶対に合いません(笑)。ですので、片手ずつ完璧に練習して、ある程度のテンポで一気に合わせてください。意外と簡単に合うはずです。
  2. 右手の16分音符は指を立ててカリカリ弾かず、やはり指を伸ばし気味で、ただしあまり音が混ざり過ぎないよう。コツは鍵盤の底まで弾き込まないことです。
  3. ダンパー・ペダルは、ハーフ気味に。
  4. 第2主題が、前述の「架空の世界」です。ここはウナ・コルダをうまく利用して、霞がかかった遥かかなたから音が聞こえて来るようにゆっくりクレシェンドしてきます。
  5. そして再び第1主題、113小節以降は一気に弾き抜いてください。多少カリカリ弾いてもいいです。
  6. その対称として、129小節からの再び現れる第2主題の「天国」を思いっきり歌いきって(ただし、決して浪花節にはならないよう)、幸せのうちに曲は終わります。

 

もう一つのポイントとして、ショパンの装飾音符はバッハと同様ダイレクトに入れてください。

さあ、あなたの「天国」の音、聞こえて来ましたか?