さあて、とうとうモーツァルトが出てきました!第1回の「エリーゼのために」からドビュッシー、ショパンと続いたのですが、ここで一つピアノを弾く上でとても重要なことを申し上げなければなりません。それは、「音取りが簡単」=「簡単な曲」という図式は全く成り立たないということです。この「トルコ行進曲」は、音取りがさほど難しくありません。そのため、意外と早い段階で生徒さんが弾く機会を得るのですが、実は物凄く奥が深く、高度な演奏テクニックを要します。1曲の練習にかける期間の長さからいうと、バッハかモーツァルトか?というほど時間がかかります。
私自身、若い頃からできればモーツァルトは面倒なので避けて通ろうと思って来ました。ところが一度練習を始めると、これがハマってしまうのです。モーツァルトはベートーベンよりもっと前の時代ですから、キーの数がより限られているにも関わらず、「これでもか!」というほどモチーフがてんこ盛りになっています。これも、モーツァルトの魅力の一つなのかも知れませんね!それともう一つ、この曲は極めてドイツ的に一糸乱れぬテンポで淡々と弾きましょう。
- モーツァルトのスラーはショパンやドビュッシーのそれとは全く異なり、指を立てて弾くスラーです。(何のこっちゃ?と思われるでしょうね!)ライグラフ・メソッドでいうヌア・フィンガーでしょうか。
- 左手の伴奏は軽く、装飾音符も軽く早く入れてください。
- モーツァルトのp(ピアノ)は小さいこもった音ではありません。透き通ったキラキラした音です。
- 右手、左手とも、16分音符は音が繋がらないよう注意してください。16分音符のところは、ペダルは踏みません。
- いい忘れましたが、この曲もアウフタクトでしたね?1小節を1拍子で取り、反復記号の単位で呼吸してください。
と、これだけ書いてしまうと「ああ、子供にはとても無理!」と思われるでしょう。ところが、意外とお子さんの方があっさり弾いて上手だったりするのです。大人の方が余計なことをたくさん考えて、複雑にしてしまうのかも知れませんね。子供に習うところは素直に習いましょう!