今回は、敢えて非常にシビアな問題を取り上げることにしました。それは、多くの生徒さんがアップライト・ピアノで練習されていることを承知の上で、アップライト・ピアノでは弾けない曲がある!ということを申し上げなければなりません。このことをはっきりおっしゃるピアノの先生は少ないと思いますが、それは一つに先生ご自身がこのことをご存知ない!ということが言えると思います。
まず、これはアップライト・ピアノとグランド・ピアノの構造上の違いから来るもので、残念ながらどうしようもありません。大事なことは、「それを知った上で弾いているかどうか」ということです。いざとなったら、スタジオのコンサート・グランドで練習していただけますので、どうぞご安心ください。ただし、一流の音楽大学やコンクールを受ける方、本番はコンサート・グランドを使用します。はっきり言いますが、普段アップライトで練習していて、いきなりコンサート・グランドで「ハーフタッチ」で弾くというのは、ほぼ不可能です。このことは、シンガポールからプロのピアニストが生まれない理由にも関係するのですが、まずは「グランド・ピアノの普及率」が極めて低いことが、一番の理由だと思います。アップライト・ピアノでは、残念ながら「音色の変化」が付けられません。
1、アップライト・ピアノでできないこと
- 早い連打
- 早いトリル
- 早いスタッカート
- ハーフ・タッチ(ハーフ・タッチのレガートも含む)
- ウナ・コルダの機能(音色の変化、ハーフも含む)
2、アップライト・ピアノで弾けないフレーズがある曲
- ベートーベンの「ワルトシュタイン」以降のソナタ全般
- モーツァルトの「ソナタ」全般
- シューベルトの即興曲全般
- ショパン、シューマンのほぼ全曲
- バッハの一部の曲
- ドビュッシー、フォーレ、ラベル、プーランクなどのフランスもの全般
さらに、極めつけの事実を申し上げると、何故、古いタイプの先生(ローカルの先生も含む)がいつも「指を上げて弾きなさい!」と言うのか? ここに非常に重大な問題が隠されています。それは、そういう先生のほとんどがアップライト・ピアノだけで練習されて来たか、あるいはアップライト・ピアノとグランド・ピアノの構造上の違いをご存知ないために引き起こしてしまう「大惨事」に関係してきます。これは、次回の「アップライトが引き起こす大惨事」でお話しましょう!